マズローの低階層を早めに壊せ

”どうしたら社会を変化させることができるか”

職業柄もあるが、上記の問いは常にずっと考えている。これはピュアに社会にインパクトを与えたいという気持ちもあるけれども、自分はそこまで立派な人間ではないので、どちらかというと今のファンドサイズのリターンをだすためには社会に影響力があるようなスタートアップをうまないといけないという力学によって考えさせられる面も大きい。

では、具体的にどのようにして社会を変えることができるのか?(加速させられるのか)ということを考えてたときにもちろんいろんな観点から気にするべきことがあるのだが、個人的に大事だなとおもうことは”熱量高い人間が長く取り組み続ける”こと。

長く続けられることは非常に重要。短期で劇的に社会が変わることは残念ながらそんなことはあんまりなく、長期的に変化していくことを期待し社会と人と対話続ける胆力が必要なのではないかと思う。もし短期で変えようと思うとそれは何かしらのリスクが伴う活動になってしまう可能性が高くあんまり推奨はできない。(暴力などに安直に訴えかけてしまうようなオプションをとりがちになってしまう)

では、”そういった長期的なコミットを熱量高くもつ人間をどのようにして増やせるのか?”という問いが次に出てくる。自分がこの問いに対して、一つ考えうるとしたら”熱量ある人が1−2億円を早く稼ぐことができるか”ということが重要なのではないかと

一生働かなくても良い金額でもないし、ただ手前の金銭的な心配がなくなる額っていうのを早めに人生で手に入れることが多くできる社会っていうのが、結果的に社会を変えることができるような社会づくりになるのではないか。

10億円は多すぎるし数千万円前半では少なすぎる。1−2億円ぐらいで、足元の生きていくかは家族や子供含めて最低限カバーできた範囲で、もっと個を超えたものに対して情熱を燃やすことができる環境づくりっていうのは大事だと思う。

ノブレス・オブリージュをいかに多くの人が纏えるのかっていう問いに近いのかもしれない。もちろん今は階級社会ではないが、そういった騎士道精神というものを纏える人をいかに増やせるかっていうのは大事な考え方のようにも思える。人間やはり目の前のことに不安がある中で他人のことや社会のことを気にかけられるほどではないと正直思っている(もちろんそうでない人もいるのもわかる)

マズローの欲求には、生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、自尊の欲求、自己実現の欲求がある。もちろんこの社会においては基本的なものをクリアしているものが多いはずではある。しかし労働者である以上実はこのマズローの低段階の欲求を本来の意味で抜け出しているものは少ないと思う。こう書いている自分ももちろん抜け出せていないと思う。(これはエンクロージャーに始まり生産手段をなくされた自分たちは、マルクスのいう疎外化されて生きてしまっているためでもあるとは思うが長くなるので省略)

なので本来の意味での自己実現だし、実はマズローの欲求の最上位には自己実現とうよりは、もっと大きな主語である社会全体の在り方の進捗のような、もっとメタな実現欲求というのは人間はもっているのではないかと考えたりもする。

このような背景を考えるに至ったのは、日本の大学生までの視座の高さと、その後に迎える労働として働き出すと視座が下がっていく減少を目の辺りにしてきたからだ。大きな主語で話しすぎるのは良いことばかりではないが、大学生までは様々な学生が勉強をしているため大きな主語において社会問題を考えることができていた気がしている。自分の周りの友人なども貧困問題やジェンダー問題、気候変動など多くのことに関心を持つ人が多かったと思っている。

ところが、就職をしだしていくと目の前の課題や忙しさ、生きていくのに必死になりそういった思いは忘れていってしまう。そうした中で家族・住宅ローンなどのまた新しい課題に当たり、生きていくのに必死なのが普通だと思う。それは決してその人の意思が弱いとかそういうのではない。ある程度仕方がないと自分は思う。

だからこそ、特に普通の話なのだけれどもノブレス・オブリージュを纏うためにも、社会を良い方向に変えていくためにも足元の不安をなくし、高次元の欲求を叶えていくベクトルをいかに強めていくことができるのか?というのは考えるべき問いだとは思う。

余談だが、サムアルトマンがOpenAIの株を一株も持っていないという報道があるが、その背景には何か恣意的なものが入れば入るほどAIの社会的有効活用において歪むと彼が考えているからであろうし、それは彼がビジョナリーだからというだけではなく、LoopsやYCなどでの金銭的な成功があるからこその意思決定ができるのだと思う。そういった意味においてもビジョナリーな人が早めに金銭的な生存から抜け出すことは社会を変えていくことにおいては重要なのではないかと思えた。

では具体的にはどういう方法があるのだろうか。ポジショントークとしてはスタートアップの何かを所有することが一番ベストな選択肢だと思う。SO/株などである。1−2億円を早期で獲得できる方法は何個かあるとはおもうが、その中でもポジショントークとしてもそのような獲得方法を推したい。

志を大きく長くやることを決めた起業家が、結果として時価総額の大きな企業を創り、そうした中でSOを持った人たちが大きすぎる額じゃない1−2億円ほどもつひとたちが生まれ、そうした人たちが社会のために動いてまた大きな企業や、NPOなどでもよいとおもうのですが、また活動しだすというエコシステムであり循環をつくりだすことが社会を良くしていくのではないかと思っている。
シンプルに言うと起業かスタートアップにジョインして時価総額大きな起業つくろうぜ!といういかにもVCのポジショントークのような結論ではあるが、そういった活動が社会を良くしていく変化させていくことにもつながるのではないかと信じてはいる。(だからこそInvestmentPolicyなどでSO20%などを記載させていただいた)

また少し異なる論点だが、起業家が途中で保有株を少し売るのは賛成である。もちろんPMF前や、PMF直後などのアーリーステージでそういったお金を得るのは正直議論の余地があるとはおもうが、レイターステージなどに入っていく中で、より大きなものを社会に実装していくモチベーションを高めるためにはそういったオプションはあってしかるべきだと考えているし、賛成したい。重複となるが足元の不安を感じながら社会のことを考えるのは大変だ。もっと長期的に熱量をもって取り組める体制を築くことをするのは起業家として考えるべき論点であると思う。

ここの議論をふくらませると更に、2つ社会には進むべき可能性があると思う。ベーシックインカムでこの状態をつくりだす議論と、AIによってコントロールされる社会をつくりだす議論である。

ベーシックインカムはわかりやすく、マズローの低次元の欲求を予め満たしてあげる話だ。後者のAIの話は、人間はそういったまずは自分の生存欲求を満たす存在であることは変わらないとおもうので、インプットだけAIにしてAIやアルゴリズムによって創られる世界において人間が従うということが社会を良くすることへの近道なのかもしれないと真剣に思うときもあるが、これはまた妄想の話。

議論が若干拡散してしまったが、社会を変えるためにはより熱量ある人々が長くコミットできやすい社会づくりっていうのがベースに必要で、スタートアップという生態系はその役割の一端を担える可能性があるものではないかと思っている。

最後に魔王という漫画が自分は高校生のときに読んで強く印象・影響を受けているのだけれども、そのセリフで”社会を変えるためには強い意志と金が必要だ”っていうセリフに感銘を受けて金のほうの今の仕事に繋がっている。今回の記事も大いにその影響は受けている