失われた30年で何を日本は得たのか

自分は1991年生まれなのだけれども、いわゆる失われた20年・30年の日本しか見ていない。そもそも自分にとっては”失っていない”のかもしれないのだが。。いわゆるJapan as No.1のような時代感や空気感ということは味わったことがない、どちらかというと教科書上の話である。

物心ついたころには、不景気だとかそういった話を多く聞いていた。バブルの頃の日本のご機嫌を知らないので、基本的にはいろんなマイナス方向のニュースしか経済においては聞いてない。

世界時価総額ランキングの変化

よく引用される下記グラフのように平成3年に自分は生まれたがその前の平成元年には世界の時価総額ランキングにおいては上位が日本勢が占めていた。しかし、それから30年経ったときには、ほとんど見る影もなく消えてしまっている

(引用:https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24295

今回の記事でなぜこうなったのかということを深掘りするつもりはないが、基本的にはIT含めた変化についていけなかった結果、GAFAM中心に上位の時価総額が入れ替わった結果となっている。この頃に何をしておけばよかったのかなど含めては様々な考察や意見があるともうので、今回の記事では割愛する。

30年で何を得たのか?

このように、時価総額というランキングや、GDPなどを見るとまだ3位ではあるが中国に抜かれて、また今後も人口動態を考えると最近出生が70万ほどになっていったということがあるよに経済的な意味においてはゆるやかに沈んでいく国であることは認識している。(これが良い悪いという論点ではなく、人口動態には逆らえないので、移民などを非常に積極的に受け入れることが無い限りは決定している未来ではあるとは思う)

だが後ろ向きな議論だけをしても仕方がないし、世界的に見てもまだ日本・Japanという国の知名度であり役割は大きいように思える。トヨタやSONYなどのような企業も世界的にはまだ知名度や影響力は高い。なので”無くしたモノではなく得たモノはなにか?”について考えてみたい。

日本はハードパワーは減退したが、ソフトパワー面は強化された

例えば何を得たのかというと、日本のソフトパワー面には注目が集まっているのではないかと思う。ソフトパワーとは、アメリカの政治学者のジョセフ・ナイが提唱したハードパワー(軍事力や経済力などの強制力)と異なる力の存在として、提唱されたものである。

ソフトパワーとは、強制や支配ではなく、魅力や説得を通じて他国や人々に影響を与える能力のことである。日本はこのソフトパワーというものに関しては30年をかけて養ってきたのではないかと思っている。

今回深くは掘らないが例えば、日本食の地位向上や、観光立国としての成長はそれを表しているのではないか。下記グラフがあるようにもちろんコロナで一時期凹んで入るもののの、2010年に1,000万人ほどだった観光客の人数が、2019年の時点では3,000万人もの人数になっている。これは中国などの周辺国で中間層が増えたなども影響はあるのだろうが、前述した日本食が世界で受け入れられていることや、日本の観光コンテンツ力の高さというのもが世界に知れ渡って行ったのだと思う。

そしてそのソフトパワーの貢献に大きく影響しているのはアニメ・ゲーム・漫画などのような文化産業である。そういったエンターテイメント・文化産業の発展はこの失われた30年で、得たソフトパワーの強さではないのかと考えている。

ハードパワーを得た国はソフトパワーに移行していく?

余談だが、もしかすると経済的に急速に発展した国に待っているのは、こういったソフトパワーの強化なのかもしれない。例えばフランスやイタリアなどはそういった類似例になるのではないか。経済的に発展することによって資本が蓄積されそのような資本が文化に向かっていく、もしくは中間層が増えていくことによってそういった余剰の文化というものに対して着目が集まりやすくなるみたいなのは仮説としてありそう。(こういった定説とか論があるよってのあれば教えてください)

日本の印象の変化:製品からコンテンツへ

今おそらく海外にいって日本の印象を聞くと、ポケモンやNARUTOやワンピースなどのようなコンテンツのことを印象として話すことが多いのではないか。多分これが30年前だと、TOYOTAとかカメラとかそういった家電製品やハードウェアだったのではないだろうか。

この変化こそが、今の日本を表しているのではないかと思う。この影響においてはNetflixのような巨大プラットフォームの影響も大きいと思う。日本の漫画やアニメがやはりこの数年で驚異的に市民権を得ているように思える。そういったコンテンツは今後も日本の強みではあると思う(当たり前だが)

株式会社ポケモンは上場すれば時価総額はいくらなのか

冒頭に時価総額ランキングを出したが、例えばそういったコンテンツが上場していくとしたらどのぐらいの時価総額になるのだろうかということを考えてみた。未上場だがポケモンは官報で売上などがでている

ポケモンの2023年2月期(第25期)の決算は、売上高2345億2800万円(前の期比14.8%増)、営業利益666億4500万円(同11.4%増)、経常利益691億0500万円(同11.1%増)、最終利益488億5400万円(同18.1%増)と2ケタの増収増益となった。過去最高業績となったもよう。(官報より)

詳しくはCompsの分析をしてないが、ざっとIPビジネス関連という意味においてバフェット・コードから引っ張ってくると、こういったところを比較できる。

とすると、PERはばらつきあるが、30−45倍ほどと仮定すると、1.6-2兆円ほどの時価総額となる。いわゆるデカコーンではある。日本でいうとでいうと、時価総額ランキング100位ぐらいにはエントリーされるほどの規模となる

このブログを書くにあたって、もうすこしポケモンの時価総額が高くなるかとおもったけど、ディズニー(ウォルト・ディズニーなどは、20兆円近くの時価総額となり、PERでいうと70倍ほど現在だとついている)などと比較すると、そこまでのインパクトではなかった。ジブリもこのまえ300−400億円ということで日本テレビに買収されたが相対的には安い価格なのではないかと思う。このあたりは製作委員会方式などエンタメ特有の収益構造についての特徴が絡んでいるのかもしれないが、世界に与えている影響に比較しては時価総額はまだまだついてないのかもしれないと思えた。いわばアンダーバリューされているようにも思える。

実はいまからがグローバルチャンス本番?

これまでにはこの強みというものがあまり活かせなかった可能性がある。しかしスマートフォンというTV以外で身近に国境を用意に超えてコンテンツを消費・体験できる存在が普及していき、YouTubeやNetflix、Forniteのような巨大プラットフォームが世界中をドミナントしていっている今の時代だからこそ、その上で輝くコンテンツが日本から大量に生産されていくことができるのではないかと考えている。

この前知り合った方で、USなどでアニメを売ろうとおもっていも7-8年前だと日本のアニメに興味をもっている方はいなかったが、この数年で劇的に変化したとおしゃっていた。下記グラフにもあるように年々アニメの海外市場の売上は伸びており、現状でもほぼ国内市場と同じ規模の大きさを誇っている。

今年に例えばこれを表すようにスラムダンクや新海誠の新作などが世界中でヒットを産んでいる。またスタートアップの世界においても、グローバルにいち早く進出できているのはカバーやエニーカラーのようなVtuberの市場であったりする。こういったコンテンツがグローバルにでていくことができる土壌が整ってきていたのが、今の時代なのではないかと思う。

コンテンツ・エンタメへのVCマネーの流入

その中で自分もPlott(YouTubeアニメ)や、最近リリースをだしたAnotherballや、NOTHING NEW(短編映画製作)、Conviction(アニメ制作・NFT)などエンタメ・コンテンツ企業にも投資をしており、そういった強くなっていったかつ土壌が育っている日本のソフトパワーにレバレッジをかけていくような投資は今後も考えたいし、実行していきたいと引き続き思っているし、エンタメへの投資の流れは感じている

一方エンタメと一言でくくると大きすぎるのだけれども、VCと相性が良いのかは正直まだわからない。アーティストの方や近い方と話しているとVCの資本コストは重すぎる可能性もある、中間が足りていない。しかしこの領域にチャンスがありそうな空気感は漂っている。

ソフトウェアに対する投資がPE(バイアウトファンド)のスコープになりつつあるような今(これもどこかでブログに書きたいが)、もう少しこの領域にお金を集めて日本ならではの勝ち方というのは考えたい。簡単なことではないが・・

韓国でいうとHYBEみたいなBTSの事務所などはVCから集めて上場しているし、かつVCにLP出資をしたりしているので、韓国こそそのソフトパワーにレバレッジを国策単位でよりかけている感じもあるので、どういう生態系やどういう意図で出資しているのかは学びたいなと思ったりもする。

まだ日本にできることはあるかい?

冒頭書いたように人口動態には逆らえないのが定めではあるが、まだまだ日本という国においても課題や述べてきたソフトパワーを生かした攻め方ができるところはあると思う。例えば言い尽くされた言葉ではあると思うが高齢化社会というのは先進国の中でも深刻だ。そういった課題を先んじて解ける権利がある。

また人口動態で働き手が減る以上DXであり、効率化というのは急務なはずである。そういった外圧によって、SaaS含めたいろいろな働き方の変化というのは起こさざるを得ないであろう。

失われた30年を生きてきてしまった自分ではあるが、それはもう起こったことは仕方ないことなので、日本でいま日本のスタートアップメインに投資をしている自分としてできること、その30年の中で築いてきたことや課題として生まれたことに対して改めて着目してそこを活かす・解決できるようなスタートアップを創出していくことができればいいなと思う。