2022年初に書いた投資注目領域の振り返り

VCの仕事をして4年ぐらい毎年正月に時間ができたときに、その年の投資注目領域を予想というと結構大げさなんですが、そういった類のものを書いていて来年はちょっとどうしようかなって思っては正直いるのですが、今年の1月に書いたものの振り返りをしようかなと思います。

結構結論からいうとまあそんなもんかというぐらい。注目領域としてその当時も注目されているものが多いから正直大きく外してはないけれども、、という印象。ただこのテーマに沿って投資もいくつかできたりしているのでそれは良かったかなと思う

下記がちょうど1年前ぐらいに書いた記事となります↓↓

2022年の注目領域
メルマガで2022年1月ほどに書いた今年の注目領域のコピーです。起業や新規事業などを考えている方の何かしらヒントになれば幸いです ・事業がより複線化していき上場までの時間はより長くなる まず事業を複線化していく動きが、ファンドサイズの巨大化と共に増えていくかなと。未上場の期間はさらに長くなり長期的な仕込みをより行うスタートアップがより上場規模を大きくできるオプションが増えているので更に数が多くなってくるかなと。いままでは単一事業・プロダクトというのがイコール会社のようなイメージが強い気もするが、今後は上場までに1つの事業だけで上場することは少なくなっていくのではないだろうか。それに伴い未…

事業がより複線化していき上場までの時間はより長くなる:まず事業を複線化していく動きが、ファンドサイズの巨大化と共に増えていくかなと。未上場の期間はさらに長くなり長期的な仕込みをより行うスタートアップがより上場規模を大きくできるオプションが増えているので更に数が多くなってくるかなと。(中略)事業複線化していくにおいて、決済などをとれることは強い。特にB向けの企業は事業を複線化させていきながら金融業をおこなっていくことになっていくのではないのだろうか。

的中度:△

これは今後もずっと続くトレンドの1つだとは思っている。事業の複線化は、昨今も話にたまにあがる事業のコンパウンドに近い話なのかなと。

より手前の上場市場も考えると、明らかにいま資本の調達額において未上場のほうが現状はまだまだお金余りな感がある。そうしたときにまだまだ資本コストを払ってでも未上場で成長しながら、上場を遅らせる意思決定をするスタートアップは増えてくるのではないかと考えている。そうしたさいに資本コストに合う成長を求めるようになってくると、事業の複線化させていくのは今後必須になってくる可能性がある。スタートアップ版の両利きの経営をもとめられるのかもしれない


Composable SaaS:ヘッドレス系・ヘッドオンリーなど、ノーコードあたりがSIer(基幹システム)とSaaSの間を繋ぐ一つのトレンドになり得るのでは:ノーコード、ローコードが基幹システムとSaaSの隙間を埋めるものとしてより注目されていくのかなと。(中略)2022年はSaaS全般はもちろん伸びていくが、そこで拾いきれないところをDXしていくようなノーコード・ローコードでInternal Softwareを構築していくことができるものにより注目が集まっていくのではないのだろうか。海外でいうとRetoolみたいなの調達しているが、このあたりはより投資分野としても今年考えたい

的中度:△

うーんすごくこのテーマが伸びたわけではない感もあるが、自分が今年投資させていただいたAppifyなどはこのテーマに当てはまるなっておもいながら投資をしている。

Appifyへの投資
Appifyへの新規投資のリリースが出ました!リードでPreAで投資をするのは久しぶりな気がします(VCから初めての調達が件数でいうと一番多いです) 株式会社Appify Technologies、プレシリーズAで5.2億円を調達。Shopifyアプリの展開加速に投資Appify Technologies, Inc.のプレスリリース(2022年10月31日 11時47分)株式会社Appify Technologies、プレシリーズAで5.2億円を調達。Shopifyアプリの展開加速に投資PR TIMESAppify Technologies, Inc. 今回5.2億円のうちのリードなので非…

Shopifyのような基幹システムのリプレイスのなりうるものはどんどんでていくが、その上で構築されるようなSaaSっぽいものは来年以降もでてくるのではないか。昔からあるPF on PFのような考え方には近いとは思うので特に何かSomethingnewがあるわけではないけども。

来年以降も直接的なSaaSというよりは、こういったちょっとメタいSaaSっぽいものはより伸びていくのではないかなと考えたりする


Valuechain全体を同じソフトウェアで行う(会社をまたぐ)ようなサービスがより増えてくる2020年の雑記にも同じようなことを下記の様に書いているのだけれども、SaaSが自社内で使われるものから、その後に商流までサービスを広げていくような登り方は今後多く更に出てくるのではないかと思う。これは事業が複線化していくという1つめのテーマにも絡む話だが、今後のSaaS企業として同じ分野でM&Aしてサービスを拡充していくか、このようにバリューチェーンを拡大していくという選択肢をとる企業も増えていくのではないのだろうか。(省略)

的中度:△

最初のコメントに近いけれども、事業の複線化に通じるものでM&Aというものは今年何件かみたように今後もそういった登り方をしていき、川上から川下まで同じソフトウェアの会社が管理できるようになっていく大きな流れは継続していくのではないかなと考えている。Salesforceみたいな会社が天下をとるのだろうか、日本の国内SaaS会社もおそらくRoll upが今後も進んでいくのは確かではあろう


デジタル上の自己表現によりお金が集まるようになっていくー>デジタルアイデンティティの構築:インターネットへの滞在時間が伸びていく中(メタバース化してく中)でデジタル上でアイデンティティをどう表現いくのかというのによりお金が動くのではないかと考えている。それをNFTなのかCreatoreconomyなのかcollectibilitesなのか様々な表現方法で試されるのではないかなと。NFTが1番わかりやすいが、Walletにひも付き自分が所有しているものを人を家に呼ばなくても見せることができるようになる。そして人はもっと前述したようにインターネットでの滞在時間が長くなるので、そういったものに対してのお金がより寄っていくのではないかと思う(中略)今年1年で劇的に変わるわけではないかもしれないが、今後5年間のなかでゆっくりと着実によりユーザーはインターネット空間に滞在する時間が長くなり、鍵を握るのはゲームとハードウェアの普及だと思っている。

的中度:△

NFT周りについては、このあたりを提示してくれた気はする。NFTのコミュニティイベントなどが日本でも盛り上がり始めた1年だったのかなと思っている。日本においては近いだとVery Long AnimalsやMEGAMI などのプロジェクトがうまれはじめたのが今年だったのかなと。日本においてもそうだし、海外をみればAzukiなどのブランドが単純にIPとして投機的に着目されていたのが去年だとしたら今年ぐらいからそのコミュニティが実際に動き出しているのが今年なのかもと思ったりしている

自分も未公開ながらもいくつかNFT周りの会社に投資をしているのですが、このあたりはそういったデジタル上の自己表現によりお金がまわるような未来があるのではないかとおもって投資をしている。このあたりは自分の興味であり、今後のデジタルアイデンティティの創成に向けて面白いと思っているのでより注力していきたいと考えている

また他に最近投資発表したFlamersのようなVRでデートするような文化形成がより進むと、そのアバターであったりデジタル上での自己表現欲求というのは人間の自然な欲求としてどんどんお金が流れていく感覚はある

Flamersへの投資
本日リリースがあったようにFlamersへリードで投資をさせていただきました。 恋愛特化メタバース「Memoria」を開発する株式会社Flamersがシードラウンドとして1億円の資金調達を実施株式会社Flamersのプレスリリース(2022年10月11日 12時00分)恋愛特化メタバース[Memoria]を開発する株式会社Flamersがシードラウンドとして1億円の資金調達を実施PR TIMES株式会社Flamers どういうサービスかというと、VRデーティング・VRマッチングサービスを展開する予定です(VR版のOmiaiとかPairsとかそういったものを頭に入れていただければざっくりとい…

DAOという組織形態が特に新興国などにおいてより一層社会実装されていく:今年後半にかけて日本でも盛り上がりを見せたWeb3.0の文脈は来年より注目を浴びそうだとおもう。まだまだガバナンスの面などで課題を感じるところもあるが、この1−2年の試行錯誤の中で洗練されていくはず。(中略)すべての組織がDAO化していくわけではないとはおもうが、向いている組織形態・組織目標においては株式会社ではなくDAOという組織に代替されていくのではないのだろうか
DAOの運営を効率化・改善化するサービスに注目がより集まる:もう全部Discordでええやんっていう話はあるものの、DAOでの運営が進めば進むほどVotingの仕組みやトレジャリーの管理などの課題などは多くできていくのではないか。問いつつ今でも、オンチェーン上での投票が可能なSnapshotを始めとして、Parcel,Coinshift,boardroom,Tallyなどなどいろいろ今でもでてきてはいる(省略)

的中度:✗

上記2つはなぜかDAOにこの当時自分がすごく興味を持っていたんだと思う。自分のリサーチ不足でもあるけど、そこまで特に日本においてはDAOのようなワードは聴くが実際にどこまでワークしているかというとまだまだこれは予想以上に実験段階が現状なのかなと思う。

どちらかというとWeb3.0の要素の中で特に日本においてはまだトークンなどのような議論はまだ自分が見ている小さい範囲だと進んでいないところが多く、NFT周りに終始している感じがある。DAOのような組織運営の議論はUSなど含めてはおそらく進捗しているのだろうけれども申し訳ない、ここは自分のキャッチアップ不足でなんともいえないことが多い


Web2.5のような性格を帯びたサービスは日本でもよりでてくる:Tokenを発行することが現実的に今の日本だと難しい。しかし下記で自分もまとめたがWeb3.0の香りがするような、OwnershipとParticipationを事業に活かすような動きはより一層今年は進んでいくのではないかと考えている。例えば特定のNFTをもっていないと入れないDiscordをつくりマーケティングのハックになったりとかなど。(中略)日本においてもそのようなOwnershipとParticipationを上手く活用したサービスや、マーケティングなどがより生まれてくるのではないのだろうか

的中度:○

ここはもう少し深堀りしたいところだけれども、こういったOwnershipとParticipationという主体性でありコミュニティの熱量ドリブンで事業をドライブしていくような事業はもう少し出てくる気はしている。NFTIPとかもそういったたぐいになるかもしれないけれども、単純にお金をだすだけでもなくクラウドファウンディングの進化系のような事業もう少しある気がしている

実際に投資先としてはRENDEZ-VOUSのようなクラッシックカーの共同保有というサービスもコミュニティの熱量ドリブンで事業進捗している。またミニッツのようなトレカのライブ配信も広義でいうと同じテーマ感で見ている。

RENDEZ-VOUSへの投資
3週連続で新規投資が続いております(Appify,Gramnに続き)が、こちらはドシードでの投資となります。Gramnもファーストラウンドですが、VC調達なしで一次のPMFまでは達成していると思いますし、AppifyはシリーズAくらいの規模感のラウンドで、試していくこととしてはまだまだシード段階ですが、売上は立ってきております。 今回のRENDEZ-VOUS(ランデヴー)はこの2社に比較しては今からサービスを出すばかりのスタートアップです。ただANRIとしても、自分としてもこういったラウンドで投資をするのがシード投資の本懐ではあるなとおもっているので、こういうのをひたすら仕掛けていきたいなと…

このあたりは来年も引き続き注目してみていこうと思っている


BCGの中でAxieを超えるようなゲーム体験ができるものが世界中で流行るようになる:BCGはボストンコンサルティンググループではなく、ブロックチェーンゲームの略なんだが(はじめてみたときは何だこれ?ってなった)去年はAxieのヒットがNFTSummerの一つのきっかけにもなったと思う。こうした草コインにちかいような投機性があるもの×ゲームと日本という市場は非常に相性が良いと思う。できれば日本初のBCGがいいが(Kyuzanは投資先でEGGRYPTO頑張ってます)どこかのBCGはよりマスに広がっていく気がしているし、それがWalletの開設のニーズにもつながってくるので、ゲームによってこの領域の参加者を広げていくことになっていくのではないのだろうか。歴史を振り返ってみても新しいテクノロジーの導入は大体ゲームからだ。そういったエンタメ性からはいってなれていき本当のそのテクノロジーの便益を得ることができる。そういった意味においてもBCGのヒットというのがWeb3.0を推し進めていく上でも非常に重要な1ピースなのではないのだろうか。昨年でいうとWolf gameなど面白い試みだった気がする。まだまだ流動性の安定化や、ステーキング以外でどう滞在してもらうかなど課題は山積みではあるが、引き続きウォッチしていきたい分野ではある

的中度:◎

これはまあSTEPNの大流行と暴落で当たったような当たっていないような感はあるものの、ここまでBCGがいきなり流行るとは書きながらも正直予想できていなかった。ただ新しいテクノロジーの導入は大体ゲームからっていうのは自分の思っているところであり、まだまだBCGも発展途上ではあるもののこういった勇者や英雄が生まれていってその成功と失敗を見た賢者が本物を今後にかけてつくっていくのではないかなと思っている


GPT3の技術がもう少し社会実装され、ユースケースを見出される:昨年に注目を浴びたGPT3だけれども、もう少しこの2022年にはもう少し汎用性よりは特定のSaaSなどのサービスに当て込みされていき、より社会実装が進んでいくのではないか。もしかすると新規サービスというよりは、Embbeded AIのようにGmailやSlackなどに浸透していくのかもしれないが、文脈から言語を自動生成することによって、人の作業時間はより短くていいように済むのではないのだろうか。例えば営業メールの作成とかそういった同じ様な反復作業だが、少しパーソナライズが必要みたいな作業においてはすごく相性が良い気がしている。日本語でどこまでできるかはまだわからないが、こういったGANっぽい技術分野についてはよりこの数年で社会実装は進んでいくのではないかと考えている。

的中度:◎

Generative AIに関しては、OpenAIのGPT3みたいなのが数年前注目されてから面白いな〜って思ってたのだけど、今年完全に元年になった年なんだろうなと思う。Stable Diffusionの衝撃があったと思えば年末には、ChatGPTの衝撃が今まさにインターネットでは話題になっている。

クリプトに対する投資熱が少し熱がとくに海外では冷えてきた中ででてきた新しいテーマで海外メディアをみると夏ぐらいからずっと伸びているものである。常に新しいテーマがでてくるのは本当にエコシステムの強さを感じる。

ただこの予想ほどユースケースを見つけるほどではなかったので、来年あたりはこのあたりのユースケース探しが始まる気がしている


以下は小さいテーマ

Solana は一つテーマになりうる

的中度:☓(○)

まだわからないが、結構今回のFTXの件含めて少し後退した感はある。ただまだまだ強いチェーンではあるのではないかと思う。広義でいうとSTEPNがSolanaだったからあたっているといえばあたっているのかもしれない

NFT×X(音楽など)

的中度:☓

海外サービスや日本でもでてきたが浸透するほどではまだ全然なかったのが正直なところ

Enterprization of Consumerの深化

的中度:○

まあこれは不可逆な流れではあるので、そんなにコメントはなく

GAN技術・Deepfakeの有効活用

的中度:△

Generative AIが広義でいうとあたるとはおもうけれども、もうすこしDeepfakeの有効活用系はあるんじゃないかなとずっと思っているがでてはない

スマートシティ・Govtech文脈

的中度:△

スタートアップが政府として盛り上げてくれているのは去年予想した以上の盛り上がりではあるものの、上記のテーマど真ん中が盛り上がったかというとそうでもない

既存事業のWeb3.0リプレイス

的中度:☓

まだぜんぜん早かった

ギグワークとして副業の普及

的中度:△

じわじわとはあるとはおもうが、一時期ほどギグワーク的な流れが進んでいるほどの感覚はない

Token Economistみたいな職種ができるのでは

的中度:☓

まだまだ早かった

音声・動画の時代

的中度:○

これも正直不可逆な流れではある。Podcastは今年結構ブレイクしたものなのではないかなとおもったりする

来年は書くかはわからないですが、年初に書くとこうやって1年を簡単に振り返れてその時自分がどういう仮説をもっていたかわかるのでエンタメとしては面白いですね。一つのエンタメとして楽しんでくれれば幸いです。